2007' 6.09

   新潟   湯沢


5年経った。

ずっと行こう行こうと思いつつ、指折り数えてみると最後に訪れてから5年が経過していた。。
現代の時の流れで考えれば十分に「一昔」前である。
かつてはホーム・グラウンドと呼べるくらいによく出掛けた川であったというのに、すっかり遠ざかってしまっていた。

いつでも行ける所だからと軽く考えていたのであるが、たまたまが重なって訪れる機会を失い、いつの間にか「橋の下をたくさんの水が流れた」のであった。

豪雨による被害なども伝えられていたので、よく知っていた場所も変わってしまったのではないかと心配していたのであるが、果たして記憶のままの風景でそこに在ってくれるのかどうか、しかとこの眼で確かめてこようではないか。

金曜の夜、9時過ぎに出発する。
予報は雨である。
よく通っていた頃も新潟といえば雨はツキモノであったので、行ってしまえばなんとかなるさ、と楽観的なのである。

関越道に乗ってサービスエリアでいつもより遅い夕食を摂り、空いている高速をいいペースで走っていくとフロントグラスに雨が落ち始めた。
ドシャ降りになったり、小降りになったりするが止む気配はなさそうである。
フロントグラスの撥水コートを掛けなおしてきて正解であった。

幸い、赤城名物の霧も大して濃くもなく通過して、いつもやっていたように谷川岳P.Aでポリタンクにミネラル・ウォーターを汲む。
以前より水汲み場が整備されて、ラクに給水できるようになった。
ようやくこの場所に帰ってくることが出来た。

昨夜は12:00過ぎに到着して、車の中でビール燃料を注入しながら当時の事をいろいろと思い出していた。
様々なことが湯のように沁み出してきて懐かしかった。なおあれがあり、これがあり・・・。

そのまま車で眠ったのだが、途中トイレに起きた時には星も月も見えていて、そのまま明るい朝を迎える事ができた。
いつものパターンではないか。イイカンジである。

ここから見える景色も、ほぼ知っていた時のままである。


※↓画像クリックで拡大

川もこの辺りの眺めは殆ど変わっていないので、訪れていなかった時間が埋められたようで安著する。
雨の後なのに全く増水もしていない、というよりは渇水気味である。

あとは魚が釣れるだけである。
もっとも、相変わらず人気スポットであるらしく、当時と同じように入れ替わり立ち代り釣り人がやって来るのである。
入漁料が倍になったことは大して影響していないと云う事であろうか?
起きた時には青空も見えたのであるが、ここにきて雲行きが怪しくなって雨がパラパラ降ったり止んだり。
まっ、こんなモンだろうね。

川に入ってすぐに2〜3回、魚の反応があってその後暫くは全く気配が消えてしまった。
以前もこの辺りではそうだった様な気がする。

堰堤に辿り着いたところでようやくライズを見つけた。
減水しているのでプールはスティル・ウォーターのようにトロい。
フライを落としたら魚が逃げて行きそうである。

おおよその景色は変わっていない様に見受けられたが、一つ一つのポイントをとって見ると土砂が流入して随分と埋められているのが判る。

それでも以外と反応があって、何回目かのライズでフッキングした。
上がってきたのは煮干サイズのイワナであった。
数年ぶりで出会う湯沢のイワナなので、まあ、良しとしよう。
次いで、岸際の柳がカバーする落ち込みに中距離からフライをねじ込み、カバーの下からフライが流れだして来た所で水面が弾けた。
絵に描いたように理想的なシチュエーションでフッキングして、魚が走る。
思ったより型が良くて、簡単に寄らない。
丸々と幅広で銀白色な魚体が見えたのでヤマメかな?と思った直後にプィッとロッドが軽くなった。
「・・・・・・!!!」
ガックリである。これは後を引く種類の悔しさである。
ブツブツと呪いの言葉を吐きつつ次の堰堤に到着する。
その堰堤で。
落ち込みの白泡の切れ目でバシャっとビートルを咥えたのはこのステンレス・ボディーのヤマメくん。
素晴らしいコンディションでグイグイ走った。

これはスカッとする一匹である。
先ほどの悔しさが払拭されるところまではいかないが、いくらか溜飲が下がった。

カミさんの流すフライにも何回か魚が出たが残念ながらフック・アップには至らなかった。
昼になって再びマトモに雨が降り始めたので、一先ず川から上がってランチ・タイムにする。
冷えた身体を車で温めながら食事を済ませるが、雨は止む気配がないのでそのまま一眠りする。
目が覚めてもまだ雨は降っている。
これでは動く気になれない。再びトロトロと眠りに引き込まれていく。
昨夜の疲れが出て泥沼のような眠りに堕ち、ナニやらうなされて目を覚ますと、どうやら空が明るくなって雨も止みそうである。
時刻はもう午後3:00を過ぎている。

それでは、車を片付けて少し上流に移動して釣りを再開することにしようか。
この場所からは川が見えないのであるが、放尿しつつ聞こえてくる川の音に耳を澄ませると何だかおかしい。
気のせいか川の音が大きくなっているような、いやいや、明らかに高い圧力を含んだ音に変わっている。
ひょっとすると・・・。

案の定、川が見えるところまで車で移動してみると、午前からは想像がつかないような濁流と化している。(写真撮るの忘れちゃった!)
川一面が激流で覆われて岩も見えない程の増水である。
寝てる間に一気に増水したらしい。上流では相当な豪雨だったのであろう。川に居なくて良かったナァ。
この川では以前にも鉄砲水を目撃しているので、さもありなんと云う感じである。
さて、困ったゾ。
他の支流も覗いてみたが同じような状況で、とうてい釣りどころではない。
午後4:00になっている。
せっかく天候も回復して青空が広がり、明るい日差しも降り注いでいるというのに。

ライズのあった堰堤のプールならイブニングで期待できるカモ、と思っていたのであるが、これでは如何にもならない。
下流の大堰堤で増水加減を眺めつつ考える。
思い当たったのは、やはり以前何度か行った事がある別の支流であった。
ダメもとで覗きに行ってみる事にするか。
その流れもずいぶん前に豪雨で川が破壊されてしまい、それ以来行っていない。
記憶の重箱の隅をつついて見覚えのある道を走り、何とか迷わずに辿り着けた。
峰筋が全く異なるこの支流は、幸いにも落ち着いた水具合であった。
同業者も一人もいない。ナニやらイケそうな雰囲気である。
川に入ってフライを流すと、すぐに反応があった。
チィさいが、取り敢えず魚は居るようだ。

渓相にかつての面影は殆どないが、この状態になってからはそれなりの時間を経て落ち着きを取り戻しているらしき気配である。底石も安定してコケの着き具合や、水生昆虫の密度も悪くない様である。

何匹か稚魚のアタックを受けているうちに、先ずコイツが一匹。
チビでもこの川の一匹目である。
次にカミさんがよくぞ咥えた、というようなサイズのヤツを一匹。


このプールではいいサイズが何度か彼女のフライに飛び出したが、残念ながら乗らなかった。

だが、マトモなサイズの魚が居る事は確認できた。
三たび、黒い雲が低く垂れ込め始める。

浅瀬のポイントが続くエリアに入ったところで、さらにマトモな型の魚が盛んに反応し始めた。
なんとかカミさんにもいいサイズの魚を釣ってもらおうと、例によって二人羽織でやっている時にフライを咥えたのがこの一匹。

体調の割りにズッシリと充実したボディーの固体である。
更に続けて直ぐ上のスポットで、またいいサイズのヤマメ。
コイツはボディもキレイだし、いいファイトもしたのだが、両方の胸鰭を失っていた。

状態からして既に随分前からそうなっていたようである。
このヒレでよくぞここまで、と健気な生命力を感ずるのであった。
そしてまた程なく、岩裏の水が巻いているスポットでライズしていた魚をキャッチ。

コイツは随分と寛容なヤマメで、2回掛け損ねて何れもフックに触っていた筈なのに、更に3回目のチャンスをくれたのであった。
他の魚も、割りとそんな傾向で比較的スレていない印象である。

ちょっと育ちの良いおぼっちゃんという面影が散見するが、まるまると太って重々しい。
フッキングした瞬間にズシッとくるので、姿が見えるまでもっと上のサイズを想像してしまうのである。
暫く、またチビどものアタックが続く。

そろそろ身体も冷えてきたし、雨も降り始めた。
時間もいつの間にか午後7:00近くになっている。

それでも最後に、堰堤でもうひと振り。
小型のヤマメを私とカミさんで一匹ずつ追加して終わりとした。
カミさんは、いいサイズの魚は掛けて寄せてる途中でバレたり、合わせ切れしたりとちょっと残念であったが、魚の反応は殆どずっとある状態で退屈しなかった。
今日はヤマメ・デーであったか。
ところで、イワナは何処へいった?
う〜ン、今日も目一杯アソんだなぁ。
不安定で目まぐるしく変わる天気と鉄砲水ではあったが、そのお陰で意外な発見もできた。
本命ではない記憶の隅にあった流れが、ここまで回復している事を思いがけず知ったのは大きな収穫であった。

※↓オマケPhoto。クリックで拡大と簡単な解説。

帰りは高速に乗ると、また前が見えなくなるほどのドシャ降りである。
赤木高原S.Aで身体に燃料を注入する。
赤木ラーメンはシンプルだが、醤油も味噌も非常に好きな味である。
久しぶりにスープを残したくないラーメンを食した気がする。
そう言えば、以前、何度となく来ていながらココでラーメンを食った覚えがない。

次も、コレだな。

久しぶりに野生に帰る猫シャチョー。
今回は珍しく到着するまで車酔いしなかったのに、着いてメシを食ったとたんゲロゲロであった。