04.17  山梨県・忍野  A釣り編


車に戻って釣り支度にかかる。
準備が終る頃、Kさんが「#4のライン持ってない?」とナゾの発言。
「えっ!?、・・・・・」それってひょっとして・・・・。

そう、あろうことか氏はリールを忘れたのであった。
「ベストに入っていると思ってたら無かった」ということらしい。
このユルさというか隙のあるところがKサンらしいと言えば、いえるのであるが。
私も夢の中では、よくロッドやリールを忘れるというシーンが出てくるけどね。

うーん、サスガ、やってくれますナァ。
残念ながら私も、今日に限ってスペアのリールを持ってこなかったのである。
釣り券も買っちゃったし、わざわざリール取りに戻るのもナンだし、こうなったら1本のロッドを三人で交替で使ってみますかね。
日差しも降り注ぎ、どんどん気温も上がってくる。

木の上に積もった雪が融け出して、雨の様にボタボタ降ってくる。
ハッチもライズも盛んである。

さて、釣ってみますか。
見えるところには他に釣り人は誰も居ないのが気分いい。

既に20年近く前になるが、フライ・フィッシングに入れ込んで研究熱心だった頃には、春先の沈める釣りで多用していたショート・リーダーの釣りを懐かしく思い出す。
この手の釣りも随分長い間していなかったが、忍野で久し振りにスイッチが入った。
フライもこの流れをイメージして真面目に?巻いてみたりしたわけである。

この忍野の流れは、渓流の釣りとは一線を画しており、日本の数少ないスプリング・クリークでチョーク・ストリームの、フライフィッシングのスポットとして古い歴史を持つ。

かつて、ジミー・カーターが大統領であったころ来日してフライ・フィッシングを楽しんだのもこの流れである。
当時、「月刊フィッシング」と言う釣り雑誌が刊行されていたが、その記事をルアーやフライを始めたばかりの私も読んで知っていた。
忍野は当時、生活産廃の投棄が著しく、プレジデントの来日に先立ち大掛かりな清掃作業が行われ、更に魚の放流も行われて大変な苦労の末、無事カーター氏に釣りを楽しんでもらうことが出来たのであると、云う様な事であったと記憶している。
日本のフライ・フィッシングの草分け的存在であった高田氏のガイドの下、ジミー・カーターがブラウン・トラウトをランディングする写真は、今でもハッキリと思い出すことが出来る。

日本のフライ・フィッシングに於いてはそんな歴史ある流れであるが、渓流と比べると、現在の忍野はとてもフレンドリーなイメージである。
ウェーダーもいらない軽装で楽しめるし、入漁料も極めてリーズナブルである。魚は沢山泳いでいるのが見えて、特にストーキングに気を使う必要もなく、虹鱒も沢山入っているので、釣れるとなれば気安く釣れる。
忍野を愛している人には怒られてしまう表現かも知れないが、実際、管釣りに近いフィーリングを持って陽気に開放的に楽しむことができる流れである。
ただし、ナメて掛かると痛い目に遭う適度な難しさを持ってもいる。

そんなワケで、私も実に久しく忘れていた感覚を、このように呼び覚まされて改まった気持ちで楽しむ機会を得たわけで、そんな何がしかの不思議な魅力を持つ場所でもあると言う事も出来る。
此処の魅力に取り付かれて近くに引っ越してきてしまった人もいると聞くし、遠くからわざわざこの流れ目指して釣りに来る人もある様なので、やはりそれなりの「何か」があるのだと思いたいところである。
何しろ、「パワー・スポット」ですからな。
さておき、最初に結んだのは、#18で巻いたクロマダラを意識したパターンのニンフで、これはすぐに一匹目のニジを誘い出した。

その後、少しずつ上流へ移動しながら、ボチボチ、掛けたりバラしたり、ネットに入れたりで推移する。

太陽は力強さをまして、ダウンでは暑い程である。


中小のニジが群れているスポットに着いた。

ここでは、3人で交替しながらドライ、ニンフ、取っ替え引っ替えしながら何匹もの魚を掛けた。

流れは次第に濁りが入り始め、透明度が下がっている。
それでも、適度に魚をキャッチして安定感が出た。

先ほど、タローが例によって何かに反応し、K婦人の手を振りほどいて脱走した。
それを追いかけK婦人が走り、その後を追ってさらにKさんが走る。
しばらくしてタローを取り押さえたKさんが戻り、それを知らない婦人が暫く探し回っていたらしいが、ようやく帰ってきた。
時刻は午後2:00近くである。

では、そろそろメシにしますか・・・・。

ネットでツバを付けておいたうどん屋に行って見たら、午後2:00で終了となっている。
ウカツにも、営業時間をチェックしていなかった。
他の店もどうやら短時集中型の経営であるらしく、殆ど昼どきでクローズしている。

駐車場の近く、橋のすぐたもとにやってる店を見つけて入る。
温かいそばを選ぶ。
ツユはちょっとばかり醤油が強くて出汁が弱い。ソバは適度に腰があって悪くないのであるが。
それでも空腹であったし、温かい食事は何より。
それなりに満足して店を出る。
午後は更に濁りが強くなっている。
それでも沈めると次々と反応がある

本流側でも雪解けの泥水の流入が著しく、午後の流れはすっかりコーヒーミルクである。

堰堤下では、3人交替で次々と魚を掛けて「釣堀だねぇ」などとぬかしつつ、楽しむ。

Kさん曰く。
「釣りってカンタンだね。」
やはり3人で、1本のロッドを使って交替で掛け、次第に夕暮れの気配がゆっくりと近付き始める。



堰堤上のプールでは、ノー・シンカーでゆっくり沈めると面白いように反応がある。


Kサンがアウターを取りに一旦車に戻って、少し経って帰ってきたが、今度は「バッテリーのケーブル持ってる?」と言う。
「ン?」
バッテリー上がっちゃったの?・・・・・。
ははっ、それなら積んであるョ。

夕方、気温も急激に下がり始めアタリもピタッと止まって、最後はティペットがトラぶって絡んだので、ちょうどそこで川から上がる事にする。

今日は十分に釣って楽しめたし、暗くなる前にバッテリーをチャージしないとネ。



Kさんの車は無事、バッテリーを繋いでエンジンがスタートし、帰りはちょっとスーパーに寄って買い物をしてそのままKサン宅にお邪魔して晩メシをご馳走になる。
美味しいほうとうを腹いっぱい頂き、食後のスイーツも頂戴し、ゆっくり会話を楽しんだ後、帰路に着いた。
番狂わせな陽気であったが、実に楽しい一日であった。

三鷹村に帰り着くと、朝の積雪がウソのように跡形も無く消えていた。
あの雪の景色は、本当に今日の事だったのだろうか・・・・?



ところで。
久し振りに犬をいじって遊んだせいか、ふと思いついた。
よく人間を犬型と猫型に分類してみたりすることがあるが、ちょっとマスにも当てはまるのではないかと。

虹鱒、コレは犬であると感ずる。
それほど気難しくなく釣れるし、活発に動き、ボディが詰まっていて硬い。犬っぽい。

そしてヤマメ。コチラは猫であると思われる。
気まぐれ、マイペース、選り好みが激しく、しなやかで柔らかな体。猫はよく女にたとえられるけれど、ヤマメも漢字でかけば「女」が入っているではないかね?

岩魚はまあ、イタチとかタヌキとか、あるいはハクビシンなどという、狡賢いようでちょっとドン臭い、愛嬌のある山の動物的なカンジがするが、如何がか。